名古屋高等裁判所 昭和26年(う)1631号 判決
論旨摘録の証拠によれば被告人が所謂外国人登録切替に際して昭和二十五年一月十七日明星村長に対しその当時行衛不明であつて同村に居住していなかつた金石雨を同村に居住する外国人として擅に同人の従前の登録証明書を返還して新にその登録証明書交付申請の手続をしたことはこれを認め得るのである。当該外国人本人でない第三者がその本人と連絡なしにその外国人登録令に関する申請をした場合にその申請に虚偽の点があつたからといつて直に論旨のように虚偽申請罪が成立するものとは速断し得ないと思われるのである。所謂切替登録申請に関する昭和二十四年政令三八一号による改正外国人登録令附則第二項によれば従前の登録証明書を返還して新に登録証明書交付申請をなすべき義務者が当該外国人本人であり第三者がその義務を負担していないことは疑なかるべく更にその申請に関する罰条の同令附則第五項は第二項の規定に違反して登録証明書交付を申請せず又は虚偽の申請をしたものを処罰する旨規定しその不申請又は虚偽申請に対する処罰が右第二項の規定に違反する場合即ち申請の義務ある者の義務履行に関すること換言すれば右の不申請又は虚偽の申請罪が一の身分犯たることを明かにしておるのであつて他方右の規定は特別の事由のない限り第三者が頼まれもせぬのに態々他人の義務たる申請に携わるということは普通にないことと相応するのでありその義務者に対してのみ正しい申請を強制することを以て一応外国人登録令の洩れなく且つ正しい申請を行わしめるという目的に達し得るものとしたことは実際的にも充分理由のあることと思われるのである。勿論義務者でない第三者が何等かの不純な企図の下に他人に関する虚偽の申請等をするということも考えられないことではないのであるがそのような場合に備えて外国人登録令は第十三条(改正前の十二条)第六号の規定を置いておる上、尚そのような行為はその時の具体的事情の如何によつては他の刑罰法令に触れる可能性があるからそれ等の罰条から間接的に第三者の虚偽申請防止の途が講ぜられており従つて前示附則第二項第五項を前段のように解することによつて実際上何等不都合を生ずることはないといい得るのである。
以上説示のように被告人が所謂切替登録に際して金石雨の登録証明書下付申請をなしその申請に虚偽の点があつたとしてもその他の事情が附加されて他の罪名に触れることのあるは格別唯その申請に虚偽があつたという丈で被告人を前示附則第五項による虚偽申請罪に問擬することはできないものというべくこの点の論旨は採用し得ない。